ネンブツダイ

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F-90X 60mm RVP 大瀬崎



真核生物上界 動物界 後生動物亜界 脊索動物門 脊椎動物亜門 顎口上綱 条鰭綱 新鰭亜綱
 スズキ目 スズキ亜目 テンジクダイ科 コミナトテンジクダイ亜科 スジイシモチ属


全長: 11cm


学名: Apogon semilineatus


英名: Indian littleperch (Indian = インドの、インディアンの little = 小さい perch = スズキ)
Half-lined cardinal (Half = 半分の lined = 線のある cardinal = 深紅色)
Barface cardinalfish (Bar = すじ、しま face = 顔)
Bottom perch (Bottom = 基本的な)
Indian little fish

漢字名: 念仏鯛


地方名: キンギョ(千葉)
オンシラズ(神奈川県横浜)
ダンジュウロ(富山県東岩瀬)
アカジャコ(和歌山県田辺)
ネブト(和歌山県和歌浦、白崎)
スジイセジ(鹿児島)

本州中部以南、台湾、フィリピンに分布する。
水深100m以浅の沿岸から内湾の岩礁域に群れて生息する。

体型は長楕円形で側扁し、腹部がやや膨れている。体色は美しい淡紅色で輝いていて、各鰭は赤色である。目と後頭部を通る2本の黒褐色の縦帯があり、第一背鰭の先端と尾柄部に黒点がある。クロホシイシモチに似ているのでよく間違えるが、目の上に黒い斑点があるのがクロホシイシモチで、眼の上に縦帯があるのがネンブツダイである

ネンブツダイの和名の由来はその行動と関係がある。繁殖期の夕暮れ時になると群れて浅瀬に上がって来るが、このとき何かブツブツとつぶやくような音を発する。それが、念仏を唱えているように聞こえるのでその名がついたのだ。実は、この念仏はネンブツダイの求愛行動なのである。念仏ではなく恋の囁きということになる。

一般にテンジクダイ類は群れて生活しているものが多いが、産卵期にはつがいになった2匹が群れを離れて遊泳する。離れた2匹は岩礁や造礁サンゴの周辺で縄張りを持ち、産卵までの7日から10日までの間一緒にいる。

ペアはお互いに体を摺り寄せる産卵誘発行動の後、雄が仰向けの状態になりお互いの腹部を密着させ、放卵と放精が同時に始まる。テンジクダイ類の雌が1回に産む卵の数は6千〜2万と言われていて、卵径はかなり小さいが、粘着糸で繋がっていて直径15mmくらいの卵塊状になっているので、雄が間違えて飲み込むような事はない。雄は放精後すぐに向きを変え、卵塊を自分の口腔内に受け入れ口内保育に入る。

口内保育とは産卵後の受精卵を雄が口腔内に収容し、孵化後のしばらくの間新鮮な海水を卵に送り、安全に守るという行動である。口内保育の期間は8日〜10日であるが、雄は単独で岩陰などで行い、その間は餌をとらない。ごく稀に、雌が卵をくわえる場合もある。危険な卵の時期を親の口の中で保護されるので、ほとんど無事にふ化することができる。

子供を独り立ちさせた後は、再び同じ夫婦で子作りに励む。魚としては一夫一婦制は珍しい。産卵期は7月〜9月なので、夏に海で見かけたときは、雄の口の中を観察してみたい。

食用となるが、小型なので漁業の対象とはならない。定置網などで他の獲物と混ざって獲れたものを唐揚げなどで食べる事がある。