クロホシイシモチ

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真核生物上界 動物界 後生動物亜界 脊索動物門 脊椎動物亜門 顎口上綱 条鰭綱 新鰭亜綱
 スズキ目 スズキ亜目 テンジクダイ科 コミナトテンジクダイ亜科 スジイシモチ属


全長: 10cm


学名: Apogon notatus


英名: Blackspotted cardinalfish (cardinal = 真紅色の、緋色の)
Spotnape cardinalfish (Spotnape = 斑点のうなじ)

漢字名: 黒星石持


地方名: アイジャコ(和歌山県白浜)
イシバリメ(愛媛県伊予)
ゲンナイ(高知県柏島)
ガサガサウフミー(沖縄)

本州中部以南、西太平洋、南日本以南の温帯域に分布する。
浅海の岩礁域、熱帯域の外海に面したところに生息する。

伊豆でのダイビングではまず最初に覚える必要があるほど良く見かける魚である。そして、ネンブツダイとの違いを覚える事も重要なポイントとなる。ネンブツダイとの違いはクロホシイシモチには体側に縦帯がなく、頭に1対の黒点があることでわかる。

一般にテンジクダイ類は群れて生活しているものが多いが、産卵期にはつがいになった2匹が群れを離れて遊泳する。離れた2匹は岩礁や造礁サンゴの周辺で縄張りを持ち、産卵までの7日から10日までの間一緒にいる。

ペアはお互いに体を摺り寄せる産卵誘発行動の後、雄が仰向けの状態になりお互いの腹部を密着させ、放卵と放精が同時に始まる。テンジクダイ類の雌が1回に産む卵の数は6千〜2万と言われていて、卵径はかなり小さいが、粘着糸で繋がっていて直径15mmくらいの卵塊状になっているので、雄が間違えて飲み込むような事はない。雄は放精後すぐに向きを変え、卵塊を自分の口腔内に受け入れ口内保育に入る。

口内保育とは産卵後の受精卵を雄が口腔内に収容し、孵化後のしばらくの間新鮮な海水を卵に送り、安全に守るという行動である。口内保育の期間は8日〜10日であるが、雄は単独で岩陰などで行い、その間は餌をとらない。ごく稀に、雌が卵をくわえる場合もある。危険な卵の時期を親の口の中で保護されるので、ほとんど無事にふ化することができる。

日本の沿岸に生息するテンジクダイの産卵期は7月から10月なので、伊豆で最もダイビングが盛んな時にこの口内保育は見られるはずである。

左下の写真では右上の写真より口の下の部分が膨れているのが分かるが、これは口内保育中のクロホシイシモチである。

頭部にある内耳に「耳石」と言われる硬い骨がある。耳石は魚の平衡感覚をつかさどる三半規管である。耳石に刻まれた年輪によって魚の年齢を調べることができる。

和名の由来は、頭部に一対の黒色点があることからクロホシ、食べると耳石が歯に当たるところからイシモチとなったことによる。

大群をつくり、ときには数千匹、数万匹の群れになることもある。定置網などで大量に漁獲されるが、食用として利用されるのはわずかで、捨てられてしまうこともある。