ボラ

F-90X 60mm RVP 富戸 写真をクリックすると
高画質でご覧いただけます。
F-90X 60mm RVP 大瀬崎



真核生物上界 動物界 後生動物亜界 脊索動物門 脊椎動物亜門 顎口上綱 条鰭綱 新鰭亜綱
 ボラ目 ボラ科 ボラ属


全長: 34cm


学名: Mugil cephalus cephalus


英名: Gray mullet (Gray = 灰色の mullet = ボラ)
Black mullet (Black = 黒い)
Common mullet (Common = 普通の)
Springer (Springer = はねる物)
Striped mullet (Striped = 縞のある)
True mullet (True = 本当の)

漢字名: 鯔、鰡


地方名: シュクチ、ツボウ(秋田)
シバ(宮城)
アマボラ、メジロボラ(新潟)
バイ(石川)
ケラナゴ(静岡県浜名湖)
ギンコ、ギンバク(三重県伊勢地方)
グイナ(和歌山)
マクチ(長崎)
スクチ(佐賀、長崎)

北海道以南の日本各地、西アフリカからモロッコ沿岸を除く世界各地の温・熱帯域に広く分布する。
沿岸から河口などの汽水域、河川などの淡水域にも生息する。

体は丸みを帯びた円筒形で、頭部は平たい。ボラはトビウオに近い魚で、トビウオの胸鰭を取ったものと思ってもいい。眼には脂瞼という厚い膜がある。

和名の由来は、ホバラ(太腹)が転訛したと言う説、「掘る」の意味で、頭を泥に突っ込んで餌を食べる様子から来たと言う説、体形が角笛に似ているので、中国の角笛を意味する「ハラ」という言葉が転訛したと言う説など諸説ある。空中にジャンプする習性があることから英名では「スプリンガー」の名がある。

塩分の適応性が幅広い事から「広塩性魚類」の仲間となっている。外海はもちろん内海、河口域(汽水域)、川の中まで遡って暮らす広い生活域を持つ。これらのすみかは季節によって棲み分けられるのが特徴で、それぞれの棲みかによって生活様式も異なる。

雑食性で、海底の小動物、有機物、藻類などを泥といっっしょに食べる。ボラの歯は小さくて細かいので、固いものを食べると胃でこなさなければならなく、そのため胃の幽門部の筋肉が発達し、「ボラのへそ」と呼ばれるものとなる。「ボラのへそ」はそろばん玉を大きくしたような形で、有機性残渣と泥を分けて不要物を排出する機能がある。

冬の外海で孵化した仔魚は、春先には稚魚として河口付近に集まり、初夏になると湾内から川を上っていく。川の中流・下流域で過ごした後、秋になると川を下って河口で過ごし、冬には海に帰って越冬する。翌年春には再び河口に姿を現す。

ボラは成長に伴って名前が変わる出世魚である。2〜4cmのものを 「ハク」、10cmくらいまでを 「オボコ」、30cmまでを 「イナ」、30cmを超えたものをやっと 「ボラ」と言い、さらに80cmくらいになると 「トド」 と呼ばれるようになる。うぶな女の子のことを 「オボコ娘」 と言ったり、粋な若い衆のことを 「イナセな兄さん」と言ったり、行き着くところまで言ったという意味で 「トドのつまり」 などと言う。「イナセ」とは江戸の魚河岸の若者の髪型がイナの背中に似ていて「鯔背髷(イナセマゲ)」と言ったことから来ている。転じて粋で男気のある若者に使われるようになった。

ボラの卵巣を塩漬けにして干したものが、「カラスミ」といって高級珍味とされる。卵巣の発達した大きなボラは少なく、カラスミは高級珍味とされている。越前のウニ、三河のコノワタに並んで、三珍味として有名である。強壮、不老長寿、悪酔い防止に効能があるとされる。

カラスミはその形が「唐の墨」に似ているのでこの名がついたのだが、もともとはギリシャ、トルコで考案された食物である。中国を経由してから、400年程前に日本に伝来した。当時の長崎代官が秀吉に謙譲した際名前を聞かれて困り、とっさに「唐墨」と答えたので、それ以来この名が全国に広まったと言うことだ。

秋が深まると体に脂が乗り臭みもなくなり、寒中ボラといって一番おいしい旬となる。白身で淡白な味わいで洗いや刺身にして、しょうが醤油や酢味噌で食べるとよい。ぶつ切りにして鍋物や汁物にもする。へそは塩焼きにして食べると美味しい。

釣りでは昔はあたりが柔らかいので人気があったが、今では臭みがあるので外道として扱われている。これは環境の悪化により、海底の汚れの影響を受けているからである。時期は夏から秋にかけてが良く、短めで柔らかい竿で、餌はバチやゴカイを使う。