アメフラシ

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真核生物上界 動物界 後生動物亜界 軟体動物門 貝殻亜門 腹足綱 後鰓亜綱
 無楯目 アメフラシ上科 アメフラシ科 アメフラシ属


全長: 40cm


学名: Aplysia kurodai


英名: Sea hare (hare = ウサギ)
Kuroda's sea hare

漢字名: 雨降、雨虎


日本各地、韓国、中国、朝鮮半島などの北西太平洋沿岸に分布する。
海岸の潮溜まり、沿岸の岩礁域の転石帯などに生息する。

体は軟らかく長卵形で前方へ細くなっている。体色は濃い褐色か紫黒色の地に灰白色の小斑点が散在する。頭部には大きい触角一対と小さい嗅角一対がある。嗅角の基部には小さい眼がある。

側足葉が背中の左右両側にあり、その内側には薄く小さい貝殻が外套膜に包まれている。貝殻には殻頂という突起部分があり、体に押しつけたようになっている。キチン質で、その内側は石灰化していて少し硬く、押し広げられた部分に同心円状の成長線が見られる。

アメフラシは後鰓亜綱の仲間で、一度巻き貝としてねじれた体が、発生の初期にねじれ戻りをする。そのために鰓が心臓の後方に位置するようになり、後鰓類と名づけられている。鰓は外套膜の右下側にある。

紫汁腺という器官が側足葉の中の外套膜にあり、外敵に襲われたり、体に強く触れると紫色の粘液質の汁を分泌する。

前鰓類の多くが雌雄異体であるのに対し、後鰓類は雌雄同体で、同一体内に卵巣と精巣があり異個体間で交尾する。アメフラシの場合は3個体以上の数個体が同一方向に頭を向けて連なり「連鎖交尾」をすることが知られている。陰茎は頭部にあり、先頭の個体は雌として、最後尾の個体は雄として、間に挟まれた個体は、前方の個体に対しては雄、後方の個体に対しては雌となる。

交尾によって相手から受け取った精子は、一旦体内の受精嚢に蓄えられ、やがて成熟した卵が産卵される時に、この精子との間で受精が起こる。産卵は岩礁や海藻などに産み付けられる。

卵は小さく、直径100マイクロメートルくらいで、卵殻(らんかく)という丸い袋一つに15〜30個以上入っている。この卵殻は連なって卵紐(らんちゅう)という長い紐状となり、更にそれが絡まって塊状となる。この塊は「海ぞうめん」と呼ばれる。産卵直後の卵紐は鮮やかな黄色だが、卵の発生が進むにつれて肝臓が形成され、次第に褐色を帯びるようになる。卵はヴェリジャー幼生に成長し孵化する。ヴェリジャー幼生はヴェーラムと呼ばれる面盤状の遊泳器官で海中を漂うように泳ぎ、プランクトン生活にはいる。

学名はその関係者に敬意を表して、発見者などの名前をあてることがあるが、アメフラシの種小名の「kurodai」は貝類学者の黒田徳米に因んで名づけられている。英名でも「黒田」を入れる場合がある。また、英名の「ウサギ」は頭部の突起をウサギの耳に見立てて名づけられている。中国でも海兎と呼ばれている。和名の由来は背中からの紫色の汁が出る様子が、雨雲の広がるのに似ているところからという説がある。いじめると雨が降るともいわれる。

島根県隠岐島や、鹿児島県徳之島、千葉県南部など、身を食用にするところもあるが、普通は美味しくないので食用にはしない。